みなさんこんにちは。
作曲家、音楽講師の植松ヨシヒロです。
このブログはDTMや作曲、その他音楽関連情報を中心に発信しております。
今回は、Cubase 12でボーカルを録音(ボーカルレコーディング)する方法について説明します。
もともとレコーディングは、専用のレコーディングスタジオで行なう特別な工程でした。
また技術的にも専門性の高い高度な技術を要するので、プロのエンジニアの方々のみ行なえる作業でしたが、DTMソフトの進化とともにMIDIを使った電子楽器の自動演奏だけでなくデジタルレコーディングも可能となったDAW(デジタルオーディオワークステーション)ソフトとなった今、その気になれば誰もがどこでもレコーディングを行なえるようになりました。
レコーディングは専門性が高く非常に高度な技術を要することに現在も変わりはありませんが、ここではDTM初心者の方でも楽しみながらボーカルレコーディングを行なえるための機材紹介や録音方法について、できるだけわかりやすい内容で紹介できればと思います。
今や、作曲したい人がオリジナル曲作りのためだけでなく、「歌ってみた」動画や音源をネットに投稿したいボーカル志望の方や歌い手さんもDTMに挑戦する方が増えています。
そういった方々にも何かの参考になれば幸いです。
目次
「宅録」とは?
いわゆる「宅録」と呼ばれる自宅録音環境が生まれたのは、機材の進化と価格も関係していると思われます。
古くはオープンリールを用いたアナログレコーダーがありましたが、1980年代以降に登場したカセットテープを用いた4トラックMTR(マルチトラックレコーダー)がコストパフォーマンスに優れた製品で、それまで限られたプロしか購入できなかったものがアマチュアの方々も手の届く価格帯だったとのことで、当時の若いアマチュアミュージシャンの方々にも広まっていきました。1990年代中盤以降はMD(ミニディスク)やZipディスク、ハードディスクを用いたデジタルMTRが登場し、音質面だけでなく当時のMIDIシーケンサーやPCベースのシーケンスソフトとの連携も必然的に強化されていきました。
PCスペックの向上とともにシーケンスソフト側もオーディオ編集やデジタルレコーディング機能が搭載されていき、1996年にはSteinbergが「VST」を提唱し、現在のCubase12等のDAWソフトへと繋がっていきます。
録音に必要な機材
PCとDAWソフトを使って録音する場合、以下の機材が必要です。
・マイク
・Audio IF(オーディオインターフェイス)
マイク
当然ながらマイクは必須です。
用途によっては極端な話、PC内蔵マイクでもよいかもしれませんが、一般的なボーカル用としては音質に難があります。
もしDTMとしてボーカルの歌声を録音したいならボーカル録音用にマイクを1本購入をおすすめします。
マイクについては構造の違いで「ダイナミック型」と「コンデンサー型」があります。
ダイナミックマイク
ダイナミックマイクは耐久性があり多少の衝撃や湿気に強く、外部電源も必要としません。
ノイズやハウリングにも強く、手で持って使用できるのでいわゆるカラオケBOXやライブハウスでよく見かけるのがこのタイプです。
コンデンサーマイク
コンデンサーマイクは衝撃や湿気に弱く、「ファンタム電源」という48Vの外部電源(たいていの場合はAudio IFからの電源供給)を必要とします。ファンタム電源は次に紹介するAudio IFのマイク入力(XLR端子)のマイクケーブルを介して供給されます。
感度が高いので周波数的にも幅広く繊細に収音が可能です。そのためレコーディングスタジオで主に使用されているのがこのタイプです。
Audio IF(オーディオインターフェイス)
Audio IFを使用することでより高音質な録音とモニタリングが可能となります。
現在発売のAudio IFの多くがUSB接続で、USBケーブル1本で使用できます。一部Thunderbolt接続のものもあります。
前述のとおりコンデンサーマイクを使用の方はファンタム電源の供給が可能なAudio IFを準備してください。
コンデンサー型マイクを使用する際はマイクスタンドに「ショックマウント」というパーツを介してマイクスタンドに固定させて使用しますので、その場合は次項のマイクスタンドが必要となります。
例:audio-technica AT8410a
あると便利なもの
レコーディングの際、あると便利なものが以下のものです。
・マイクスタンド
・ポップガード
マイクスタンド
マイクスタンドは、コンデンサーマイクを使用する際は必須です。
もしダイナミックマイクを使用する場合でもスタンドを使用したほうがより安定した録音が可能です。
マイクを手で持つとどうしても微妙に口とマイクとの距離や角度がずれてしまい音量差や音質面でばらつきが生じます。
マイクスタンドを使用することでマイクとボーカルとの距離、角度を明確にすることによって、より安定します。
ポップガード
ポップガードは、先ほど話題に触れた「ポップノイズ」を防ぐことができます。録音のテイクでポップノイズが入ってしまうとどうしようもありません。別途ノイズ除去が可能なオーディオ編集ソフト(iZotope RXシリーズ)などを使えば解決できる場合もありますが、手間と時間等を考えると録音前に解決できる問題は解消しておいたほうが絶対よいかと思います。
位置的にはマイクと口元との間にセットするような感じです。
セッティングや録音時の注意点
もし普段スピーカーを使用している方は、セッテイングや録音する際には必ずスピーカーをOFFにして音が出ないようにしてください。
主に以下のような問題が発生し、最悪の場合機器を壊してしまう恐れがあります。
注意点1:セッティング時
スピーカーがONのときに機器のオンオフ、もしくはオーディオケーブルを抜き差ししてしまうとスピーカーに過度の負荷がかかってしまいます。
注意点2:マイク録音時
スピーカーから出力された音をマイクが拾い、その音がスピーカーから出力されてまたマイクが拾い・・といったループが発生してハウリングの原因となります。
くれぐれもご注意ください。
また、エアコンなどの空調や空気清浄機の動作音がマイクで集音されてしまう場合、できればそれらの機器も録音時は一時的にオフにしたほうがよいかもしれません。こういった音もノイズ除去ソフトで解決できることもありますが、室温や湿度は体調面で関係してきますのであまり無理しすぎないようにしてください。
録音時の機材セッティング(配線)
※Audio IFのセットアップ(ドライバーソフト等のインストール)はすでに完了している前提で話を進めさせていただきます。
Audio IFのツマミは0にする
Audio IFのボリュームや入力ゲインといったツマミ関係はいったん0にします。また先ほど書いたように録音時はスピーカーの電源や音量もオフにします。
ファンタム電源使用時はそのスイッチもオフになっているか確認してください。
Audio IFにマイクケーブルを接続
Audio IFのMic In(入力端子)にマイクケーブルを接続します。
ケーブルは一般的にXLR端子のケーブルを使用します(キャノン端子、キャノンケーブルとも呼ばれます)。
マイクにケーブルを接続
マイクスタンドにマイクをセットしたらケーブルを接続します。
言うまでもないことですが、マイクを床に落とさぬようご注意ください。
コンデンサーマイク使用時はマイクを接続してからファンタム電源(48V)をOnにしてください。
マイクの高さ
スタンドをボーカルが歌いやすい高さで、かつ口元をまっすぐ狙うようなイメージでマイクの高さを調整します。
ちなみに狙う際にマイクが上向きか下向きかによって音質が微妙に変わると言われていますが、まずは口元をまっすぐ狙うのがよいかと思います。
ボーカル用マイクは「単一指向性」という特性を持ち、ある特定の方向から収音するように作られています。
そのマイクにとって不適切な方向で録音してしまうと本来の音質にならないので注意してください。
マイクとボーカルの口元の距離
ちなみにマイクとボーカルの口元との距離感の目安として、だいたい拳2〜3個分だったり20cm前後くらいが多いかと思います。
近すぎても「近接効果」が発生して低域が強調されるような状態になる場合があったり、ブレスがマイクに当たることによるポップノイズ(吹かれ)、声量によっては歪んでしまう・・・などの原因になることがあります。
また遠すぎても録音のテイクで声が小さかったり部屋鳴り(反響音)が目立ちすぎてしまう・・などがあります。
機材や空間含めた諸々の録音環境やボーカルの声量にもよるかもしれませんが、細かい部分は後述の「録音入力レベルの設定」時にテスト録音を行いつつバランスを決めていけたらと思います。
オーディオトラックの作成
Cubaseでオーディオトラックを作成する方法を以下紹介します。
4、表示されているウインドウ下の「トラックを追加」を押すとトラックが追加される
※オーディオトラック作成については過去のブログ記事でも紹介しています。
録音入力レベルの設定
録音の入力レベル(インプットゲイン)の設定は、Audio IFにあるゲインのツマミを調整します。
(「Input」や「Gain」といった表記が多いです)
機器にもよりますが、ボーカルにとって大きな声量のとき(歌でいえばサビの部分など)にPeakのランプが付くか付かないか・・くらいで合わせるとよいかと思います。
また、合わせてDAWソフト側のレベルメーターも見ながらゲインを確認します。
Cubaseには入力チャンネルのフェーダーとレベルメーターがMixConsoleの一番左に表示されているかと思いますので、このチャンネルのレベルメーターを見ていきます。
すごくざっくりした目安で言えば、DAWソフトのレベルメーターが動いたときに真ん中より少し上くらいになるようにします。
DAWソフトには「モニタリング」ボタンがあるかと思いますので、モニタリングをオンにして入力されている音を聞いて確認します。
もしモニタリングしている音が歪んでいたら入力音が大きすぎるので、Audio IFのGainツマミの値を下げます。
逆にモニタリングしている音が小さすぎたり、部屋の鳴り(反響音)を明らかに感じるくらいに声が遠く感じる場合は入力音が小さすぎるので、その際はAudio IFのGainツマミの値をもう少し上げます。
実際に録音してみる
前項でモニタリングをオンにしたときにレベルメーターが動いていれば配線的には録音可能の状態ですので、実際にDAWソフトで録音してみます。
Cubaseの場合、トランスポートパネルの再生ボタン右側の丸いボタンが録音ボタンですので、これを押せば録音がスタートします。
録音を停止させるときは再生ボタン左側の四角ボタン(停止ボタン)を押せばストップさせることができます。
設定次第によっては録音ボタンを押すとプリカウントがオンになっていることがありますので、必要に応じて設定を変更します。
プリカウントとは?
再生ボタンを押した際、曲が始まる前のカウント(メトロノーム)です。
カウントインとも呼ばれます。
Cubaseについてはプロジェクトウインドウ右下の「メトロノーム設定」内の「クリックオプション(カウントイン中のクリックをOn)」と「カウントイン」で設定可能です。
録音したテイクの確認
録音のテイクは音声が波形で表示されているかと思います。
録音したテイクを確認するときは、モニタリングボタンをオフにしてから再生ボタンを押します。
このとき、録音したテイクに
・声が歪んでしまっていないか
・声が小さくて距離が遠いようになっていないか
・不要なノイズが入っていないか
といったことがないかを聞いて確認します。
もっとも、これらは本番テイクを録音する前に行なうテスト録音で確認します。
貴重な本番テイク収録とその時間を極力無駄にしないためにも、とても大事なチェックです。
複数のテイクを残すためには?
一般的なボーカルレコーディングの場合、1発録りで終了ではありません。
複数のテイクをキープしたうえで最終的にどのテイクを採用するかをあとで決めます。
メインとなるテイクを決めつつも、必要に応じて一部分を他のテイクと差し替えたり録音し直すことも可能です。
Cubase12に搭載の便利なオーディオ編集機能
Cubase 12には、テイクのクオリティーアップに役立つ便利なオーディオ編集機能がいくつも搭載されています。
機能によってCubaseのProやArtistといった一部のグレードのみ搭載のものが多いですが、その中のごく一部を紹介します。
VariAudio
VariAudioは、録音したテイクのピッチ(音の高さ)を検知してMIDIのキーエディターのように表示でき、1音毎にピッチを修正することができます。
ピッチクオンタイズでテイク全体のピッチをスナップに合わせたり(パラメーターの加減でカッチリ合わせたり甘く合わせたりも可能)、スケールを設定してスケールアシスタントでスケールを確認したりコードに追従させたりすることもできます。
AudioWarp
AudioWarpは、Cubaseのオーディオタイミング調整機能です。
オーディオ素材に含まれる”音楽的に意味のある位置”(主にアタック部分)の「ヒットポイント」を自動検出させたあと、それをもとにオーディオ素材にクオンタイズをかけることもできるようになります(オーディオワープクォンタイズ)。
この中のFree Warpという機能を使うと直感的な操作で長さやタイミングを調整することができます。
音の高さはそのままに音の長さを調整する機能として「タイムストレッチ」もありますが、ボーカルに関してはFree Warpのほうが簡単に行なえます。
オーディオアライメント
オーディオアライメントは、複数のテイクのタイミングを合わせられる機能です。
例えばボーカルのメインとダブリング、ハモリのトラックを重ねる際、微妙にずれているタイミングの箇所を自動的に揃えることができます。
あとがき
今回は、Cubase 12でボーカルを録音(ボーカルレコーディング)する方法について説明しました。
商業作品としてのクオリティーを最優先で考えると外部のレコーディングスタジオやエンジニアの方に依頼したほうがよいのは言うまでもありませんが、諸々の予算や時間、ある程度のデモをフットワーク軽くいつでも録音できる状況にしようと思うとご自身でも録音できたほうが結果的に楽曲を完成に持っていくことができます。
ひとつの作品を誰かと共同制作する際、自分のイメージを伝えようとしたときに口頭や文字だけでなく音としても伝えられるほうが相手も理解しやすくなります。
そういった意味でもぜひご自身で録音してみてはいかがでしょうか?
お知らせ
やりたいことにもよりますが、まずはPCとソフトさえあれば誰でもDTMを始められます。
かつては夢だった「オリジナル曲の全世界リリース」も可能となりました。
ネット上にも様々な情報が数多くありますのでぜひ調べてみてください。
ですが、
・逆に情報が多すぎてどれを選べばよいかわからない
・DTMや作曲するための最初の取り掛かりがわからない
ということも多々あります。
そして「相談できる身近な友人知人がいない」方もいらっしゃるかと思います。
そういう方にオススメしたいのが「音楽スクールに通う」ということです。
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